味覚ニューロンの脳内機能地図と時空間ダイナミクスの解明
口腔内の異なる味細胞で感知される苦味と甘味の情報は特定の脳内ニューロンへ伝達され、対照的な行動・情動応答(先天的には苦味を嫌い、甘味を好む)が惹起されます。またこれらの応答は経験・学習により変化します(甘いものが嫌いになる)。本研究室では、味覚情報を伝えるニューロンの経路を可視化しながら(Sugita et al., Science, 309: 781-, 2005)、また可視化されたニューロンの機能を探究しながら(Sugita et al., Neuroscience, 250: 166-, 2013)、対照的な応答の惹起と学習による変化を可能にする機構(時空間ダイナミクス)を神経回路レベル・細胞レベル・分子レベルで明らかにすることを目指しています。
また外分泌腺のモデルとして唾液腺を用い、水分泌の駆動力として働くCl-の分泌機構や抗菌機能を発揮するHCO3-の分泌機構を、古典的なようで新しく洗練されたグラミシジン穿孔パッチクランプ法を用いて明らかにしています(Sugita et al., J Gen Physiol, 124: 59-, 2004)。さらに糖尿病になると唾液分泌が減少する機構の探究をもとに(Terachi et al., Eur J Oral Sci, 126: 197-, 2018)、唾液分泌を増加させる治療法の開発を目指しています。
必須脂肪酸の脳発生・脳機能における役割の解析
オメガ6およびオメガ3多価不飽和脂肪酸は油に含まれる重要な栄養素です。これらの脂肪酸は生体内で合成することができないため、食物から摂取しなければなりません(必須脂肪酸)。私たちはこれまで、これら必須脂肪酸が胎仔神経幹細胞の増殖・分化を制御することや(Sakayori et al., 2011; Sakayori et al., 2013) 、多くの国々においてみられる高オメガ6/低オメガ3食が脳発生障害や情動機能異常を起こすことを報告しています(Sakayori et al., 2016a; Sakayori et al., 2016b)。現在は必須脂肪酸摂取が中脳発生や摂食行動などに及ぼす影響について、脳発生の観点から研究をしています(Sakayori et al., 2020)。
胎仔脳において新たに作られた
ドパミン神経細胞